映画『マダム・イン・ニューヨーク』感想(非常にネタバレ)   

saebouさんのブログでレビューを読んで、面白そうだなと思い、9月17日(水)に、シネリーブル梅田で観てきた。

『マダム・イン・ニューヨーク』
ヒロイン(シャシ)がとっかえひっかえ着替えるサリーの華やかなイメージが、とても心に残った。
以下、ネタバレありの感想です。



シャシは、中流家庭の主婦で、夫、子供2人、姑と暮らしている。
主婦業のかたわら、手作りのラドゥ(インドの伝統的なお菓子)を作って、お客さんに届ける仕事もやっている。冒頭、朝、起きてベッドから床に足をおろすところから、手際のよい朝食づくり・ラドゥづくり、届け先のお客さん達に、待ってたよ~!と笑顔で迎えられるところまで、彼女が行き届いた主婦であることが描写される。そんな完璧な女性なのに、英語が流暢に話せないことで、夫、娘(思春期前期で母に反抗的)は彼女をばかにしている。なので、シャシは自分にちょっと自信がない。映画を観ている人にはわかる、彼女の主婦としての有能さ、容姿と人柄の優美さ、を夫と娘は全然わかってないというのがポイント。

そこに、シャシの姉(ニューヨーク在住)から、娘が結婚するので、インド式の結婚式の準備を手伝ってほしい。ニューヨークに少し早めに来て~という連絡が入る。私、英語できないのに一人でアメリカに行くなんて無理~と最初は躊躇しながらも、姉や姪達のためにほかの家族より一足早く渡米するシャシ。

ニューヨークに着いて一人で入ったカフェで、つたない英語が通じず店員にばかにされたことがきっかけで、語学学校の4週間クラスに入ることにする。その語学学校で、さまざまな国出身の生徒たちや先生とあたたかい交流をする中で、英語力が向上しただけでなく、シャシは自分に自信を取り戻していく。生徒の一人(フランス人のローラン)が彼女に愛を告白するが、私が欲しいのは恋ではなく尊重されることだいって求愛を断る。最後は、インド式の結婚式で素晴らしいスピーチをし、家族とともにインドに帰国する。

インドにいた時は、夫に、別に忙しかったらお前が主婦の片手間でやってるラドゥづくりなんてもうやめたら、とかいつも一段下に見られてるのだが、ニューヨークに来ると、語学学校の先生デービッドからは「ゴージャスなサリーのレディ」と言われる。彼女自身の中身は変わってないのだ。インドにいた時も、ニューヨークに来てからも、元々完璧なレディなのに。相手のありのままの素晴らしさをちゃんと見る人と、全く見ようとしない人と。

日常的に、家族から、「お前のやってることは価値がない」「お前は価値がない」と言われ続ける環境が、どれだけ人から力を奪ってしまうか、が描かれているように見えた。語学学校に通って英語が上達したから、だけではなく、家族とは違うさまざまな国の人たちとの率直な交流の中で、次第に心に自信と自由を取り戻していく彼女の心の動きが自然で、よくわかる。

語学学校の教師デービッドはゲイなんだが、そのことについて、ある生徒が(彼のいない時に)差別発言をしたとき、シャシはそれを「決然と」たしなめる。「あなたから見たら彼が変かもしれないが、彼から見たらあなたが変なのよ。でも、心の悲しみはみんな同じ。」姉が弟を優しく諭すように、しかしきっぱりと言うシャシ。自分が不当に扱われてきたことの悲しみに裏打ちされていて、心を打たれる場面だ。叱られた本人も、他の生徒もみんなはっとして、今までも素敵な人だと思って信頼してたけど、この人(シャシ)はとても立派な人だという空気が流れる。このやりとりを外で聞いているデービッド。そして、それまで寡黙だった別のある生徒が自分もゲイであることを告白する。この一連のシーン、とてもよかった。彼女は、こんなふうに周囲の人に勇気を与え、励ますことができる人なんだというのが示されているのだと思う。

ヒロインは、最初、お嬢さんっぽい可愛らしい容姿の人として登場するが、インドにいるときの可愛い雰囲気が、ニューヨークに来て心が変化するにしたがって、華やかさはそのままに、だんだんと立派な夫人というふうに少しずつ変わっていくのがおもしろい。あなた一体、サリーをどんだけ持って来てるの?!!と、シーンが変わるごとに衣装替えしてて、この衣装(やわらかい色合いのものが多い)がとにかく華やかで素敵だった。華やかなたくさんの衣装は、シャシという人の、完璧さ(主婦としても、容姿も、人柄も全部立派という)、ゴージャスさを象徴しているのだと思う。最後に、結婚式のために夫が贈った衣装だけが(原色の赤)、あんまり似合ってないように見えたのは夫に対する皮肉か?

語学学校の生徒たちが、それぞれ個性的でよかった。彼らも最初硬かった表情が段々柔らかくなり、、先生のデービッドの明るく開放的な感じ、結婚するほうでない大学生の姪ラーダののびのびした様子もよかった。
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by lily63 | 2014-09-21 11:54 | 映画・海外ドラマ | Comments(0)

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